■第一回 月姫前夜
■第二回 初期衝動
■第三回 産みの苦しみ
■第四回 明暗
■第五回 名残りの月
■第六回 閑話2
■第七回 奈須
■第八回 茄子
■第九回 冥土。
■第十回 比翼の鳥
■番外編 6時間耐久チャット
■番外編 その2 サークル紹介


註1
北欧神話のワルキューレが戦場で散った戦士の魂を迎えに来るのに対し、武内版ワルキューレは自らが使役する英雄を得るため、英雄を殺しにやって来る存在として描かれる

註3
「魔法使いの夜」の略

註5
ファイブスターストーリーズ。「ニュータイプ」誌の看板マンガ。作者は永野護氏。ファティマについては説明すると長くなるので、現物を読んでください

註7
第10回参照(笑)編集の都合上、こういったことが起こるのです


第九回 冥土。


「結局殺す殺さないの関係なのかー!?」
編集 そうしましたら、続きまして武内さんに質問させて
いただきたいと思います
武内 はい
編集 サークル「竹箒」での活動から。これまで何作か
「ワルキューレ」を題材にした作品を発表されていますが、
そのあたりの経緯などを
武内 以前一緒に活動していたサークルさんから本を作って
出さないかと言われまして。以前からワルキューレに
関しては考えていたアイデアがいくつかあったんで、
作ってみたという感じですね。ワルキューレを
選んだのはまず、手に取ってもらいやすい題材かなと。
自分が何事においても考えるのは
「キャッチ力の強さ」なんです。「月姫」の時もそうですが、
はじめに主人公がヒロインを殺すというインパクトのある
キャッチは他に無いので、ここを一番強く押し出していこうと
編集 神話で語られるワルキューレとは微妙に異なる、
独自の解釈に基づいて話が作られていますが(註1)
作品全体に共通するテーマといったものはありますか
武内 テーマ・・ラブコメですかねえ
奈須&編集 ラブコメっすか(笑)
武内 奈須も自分もそうなんですけど、主人公とヒロインが
殺す・殺されるっていう関係が好きなんです
一同 (笑)
武内 そういったところから始まるのが好きで。
「魔法使いの夜」もそんな感じですし。
「ワルキューレ」もそうですね。殺しに来るっていう
あたりから、どういう風に発展させていくのか。
どういう風に2人が結びついていくのかっていうのが。
そういうシチュエーションを楽しんでもらいたいっていうのが
ありますかね。
自分は物語に対してテーマといったものを明確に
持たない方なんですよ。奈須はすごく持つんですけど。
先程おっしゃられてましたけど(註2)
自分はサービス精神が強い方だと思うんです。
まず自分達が楽しむこと。そして相手にも楽しんでもらうこと。
「エンターテイメントである」ということが、
テーマといえばテーマですかね
奈須 言うねえ
武内 結構言っちゃってる?もしかして。やっばいなあ(笑)
奈須 ちょっと話が脱線するんですが、
今の話を聞いて思い出したんですよ。
「月姫」の一番はじめの企画書を書いた時に、
最後に「結局殺す殺さないの関係なのかー!?」
という走り書きが(笑)
一同 (笑)
奈須 ふと冷静になりまして
武内 ほとんどそうよね、考えてみると。殺す・殺さないっていう。
本当に好きなんですね、そういう関係が
編集 そういう関係が好きになったというのはなにかきっかけが?
武内 (奈須さんを見て)
どっから始まったんだっけ、これって?
奈須 私は「まほよ」(註3)からですね
武内 「まほよ」以前で何かそういうのなかったっけ?
影響を受けたものって・・・・・無いかあ。
自分も多分「魔法使いの夜」に影響を受けた部分は
あるかと思いますね。青子と、主人公の
蒼十郎っていうのがいるんですけども、
2人の関係がすごく良かったんで

武内崇 メイドを語る
編集 続きまして、武内さんといえば・・・
まあ、メイドなわけですが
一同 (爆笑)
編集 メイド好きになった背景、初期衝動といいますか、
そういうものがあれば
武内 最初はそんなに好きじゃなかったんですけど(笑)
とあるゲームをやりまして、なんかすごく
好きになっちゃいまして
奈須 理由とかは?
武内 理由は・・無いですね。昔は全然興味なかったんですけどね、
メイドとかって。そのゲームが何かっていうのは
あえて伏せておきますけども
編集 メイド物のゲームで影響を受けるほどの物は
そう多くはないはずですが
奈須 最近はメイドってあふれかえってますが、ちょっと前となると・・
武内 いや、ちょっと前でも十分あふれかえってたんですけどね。
「月姫」を作るちょっと前くらいにやったゲームなんで
編集 メイド物というと○○ー○あたりがはしりになりますけれども
武内 あ、ええ。あれは
奈須 通じてるよ!?あれだけで。あ、いえ、どうぞどうぞ(笑)
武内 あれはやったことあったんですけど、その時は別に全然。
なんとも思ってなかったんですけどねえ
編集 (奈須さんに向かって)何だと思いますか?
奈須 (本棚を見ながら)そのあたりにあるのが結構
ヒントになると思うんですけど。
「○○○○○メイド」ない?
武内 ええ。「○○○○○メイド」(註4)
ていうゲームなんですけどね(苦笑)
奈須 勝ったー♪
一同 (笑)
武内 このゲームの金髪の方のメイドがすごく好きで。
なんでか知らないんですけど
編集 メイドのどういったところに魅力を感じるのでしょうか
武内 いろいろな要素があると思うんですけど・・
奈須 以前に彼が面白いことを言ったんですよ。
「ファティマってメイドだよね」ていう。「FSS」(註5)の
ファティマですけど。これ結構的を得てるなと思ったんだけど。
あ、君のその病根ね
一同 病根(爆笑)
武内 そうですね、今は(現実には)なかなか無いタイプの
キャラクターなのかなっていうのはありますね。
こう、健気に絶対的に仕える存在みたいなところが
あるじゃないですか。また、これがHゲームだと
非常に都合のいい存在でもありますよね。
そういう意味でも魅力的
奈須 私はその・・・ここでメイド論をしてもしょうがないとは
思うんですが(笑)絶対服従という、屋敷の中で一番弱い
存在でありながらも、すごい誇りがあるというか、
凛としたものがあるじゃないですか。
その二律背反というか、そのあたりに自分は
メイドっていいなーと思うんですけど
武内 うーん「こういうメイドじゃなきゃダメだ」っていう
部分があるんですね、やっぱり。ミニスカはダメとか
一同 (笑)
奈須 だんだん話がおかしな方向に(笑)
編集 いやいや、この部分はもう
「武内崇 メイドを語る」という方向で
奈須 わーい♪
武内 やっぱりロングスカートで、そういう慎み深い部分が
欲しいなとか。ぁー、なんかうまく語れないよー
編集 (笑)それではちょっと考えていただきまして。
その間に、「月姫」を作る際武内さんの方から来た、
ひすこは(註6)に関する「こういう風にしろ!」という
命令についてお聞きしたいのですが
奈須 いやー、あれは凄かったです。いや、ホントに。
最初に「月姫」のプロットを立てた時、
アルク、シエル、秋葉に関してはサクッとできたんですよ。
で、キャプションを出しましたところ・・・

「この3人でー・・」
「メイドが欲しい」
「わかりました。作ります」
「どんな・・」
「双子のメイドがいい」

・・・とまあ、およそ0.5秒くらいの
カウンターで言ってきまして(笑)
ただ、自分は割烹着が好きなんで
「じゃあ、双子でいいけど、片方は割烹着にして。
お姉さんは俺がもらうから、妹の方は武ちゃんに任せる」
ということになりまして。
で、まあ、そこからはすべて任されたんですが・・。
シナリオをあげてくると

「ここの言葉遣いはダメです」

一同 (笑)
奈須 たしかに、自分は時折この言葉遣いはおかしいだろうという
ポカをやらかすんですが、それが本当に綺麗に直されてて。
あとは、これは色々なところで言ってますが、
シナリオを渡した次の日に何故か知らない立ち絵が
あがっている。

「ぇ?この立ち絵は何?」
「このシーンで使うの」
「専用で描き下ろしたんですか?」
「はい」

愛か!愛なのか!?と
武内 そうね(笑)
奈須 翡翠というキャラクターのファンになってくれた方、
それは十中八九武内君の力なので。彼のメイド力
編集 メイド力(笑)ところで、琥珀はどちらかというと、
メイドというよりは「女中」なわけですが
奈須&武内 そうですね
編集 女中ではダメなんですか?

武内 ダメですね

一同 (爆笑)
奈須 ダメかぁー!?(笑)
武内 なんでだろう。いざ問われてみると・・・
奈須 理由が無いということは、ますます病根が深いということだろう

「初恋の相手が双子だったんです」(武内)
「そりゃ夢だよ」(奈須)
編集 先程話が出てきました「双子にしてくれ」という。
これについて、双子に過剰な幻想を抱いているという
発言を目にしたことがあるのですが
武内 まあ単純に、初恋の相手が双子だったというのが
あるんですけれども
編集 なるほど。奈須さんは何かご存知ですか?
奈須 彼とは中学のころ一緒だっただけで、高校、大学は
実は違うんですよ。ですから初恋のことはちょっと
武内 初恋は中学だけどな、普通。それか小学校
奈須 ・・マジ?(笑)うちの中学校に双子なんかいた?
武内 これだよ・・いたんです
奈須 まあ、彼の頭の中だけですが
一同 (笑)
武内 まあでも、今思うとその双子というのが、
片方が明るくて片方が暗いタイプだったんで
奈須 そりゃ夢だよ
武内 夢じゃねぇー!
一同 (笑)
武内 そういう意味ではひすこはみたいな感じの
双子だったですけどね。過剰な幻想・・・
ひすこはというキャラクターには18禁の部分、
Hの部分を強めたキャラにしようというのがありまして。
その際、どういうものに性的な興奮があるかと考えて、
メイドであり、双子であるという神秘的なものを
なるべく入れたいなっていうのがありまして
奈須 さすがキャッチ力で勝負する男。なるほどー
OKSG
・・・キャッチャー?
奈須 キャッチャー(註7)
武内 なるほどね(苦笑)
to be continued…

註2
第4回前半のあたりにそういった会話があったのですが、編者側の一人語りであるのと、恥ずかしいので省略(ぉ)註の前後を読んでいただければ類推できるかと

註4
一応伏せ字にしておきました。これでいいですかー?武内さん

註6
翡翠と琥珀の略